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角田分 オフィシャルブログ

もう渡りの最初のピークか (2018年10月13・14日)

 10月13日の午前3時43分、睡眠中に上空を飛んでいく白鳥の鳴き交わす声で目が覚めました。ここ数年夜中の4時頃に我が家の上空を白鳥が鳴きながら渡来して行く時はその日に最上川に行くと次々と渡ってくる群れに遭遇していました。今年も夜中の鳴き声を聞いたので最上川に出掛けてみました。
 やはり相当渡って来ているようで9日の日と同じ河口から8.5kmの地点の中州には白鳥が沢山見えます。観察場所に向かう途中にいつものように最上川スワンパークの様子も見てきたのですが、今朝もまだスワンパーク(僕に言わせると最上川ジャングルパークですが・・)には白鳥は1羽も渡って来てはいないようです。やはり同じ中州でも樹木が生い茂っている所には危険を感じるのか降りないようです。今朝は川に突き出ている堰堤に釣り人がいないのに・・・・。

 午前6時05分 観察場所について観察開始です。
6時07分、もう飛び立つ水音が聞こえて来ます。昨夜に渡来したと思われる白鳥達が採食とさらに南下飛去するために飛び立っていきます。飛び立った後の白鳥をざっとカウントしてみましたが、398羽はカウントできました(写真1)。
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写真 1 中州上流部の白鳥

 今日は中州の上流部だけでなく下流部の方にも集団が見られますカウントしてみると57羽です。やはり白鳥が増えたので下流の場所にも着水したのかも知れません(写真2)。
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 写真 2 中州下流域の白鳥

 観察場所からは中州の上流部や木の枝の陰など確認できない場所もあるのでカウントできた455羽と合わせておそらく500羽近くは確実に一晩ここで過ごしていたものと思われます。鳴き声も途絶えることもなく聞こえて来ています。

 今日は渡りのピークがそろそろだろうと思うので飛び立ちよりも渡来してくる白鳥を中心に観察していくことにしました。
 6時23分先程飛び立って行ってのが戻って来たのかも分かりませんが、2羽が着水しました。26分に5羽、30分に15羽が上空から渡来して着水。やはり今日はどうやら渡りが一杯ありそうな予感です。
 午前6時30分から8時00分までのカウントは17群の391羽でした。一番大きな群れは午前7時54分の56羽でした(写真3)。
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 写真 3 今朝最大の56羽の群れの渡来

 以前から述べていますが、この時期に北から渡来する白鳥は、ほぼ間違いなく秋田県の八郎潟方面から7号幹線ルートで南下してきていると思われます。八郎潟から最上川河口までは直線距離でほぼ120kmです。ですからこの時期の日の出の時刻がおおよそ6時ですので、日の出と共に八郎潟を飛び立ったとしたら約2時間ほどで最上川周辺に到達できるはずです。ですから彼ら白鳥の生活行動を考えると日の出の時刻頃に飛び立ちするのが最も多いと考えています。それと最上川河口ではこれまでの観察では大きな群れはほぼ午前8時過ぎ頃までに終わっていてその後も時々渡来するのですがそれ程大きな群れでないことが多かったです。7時54分に最大の群れが渡来してきたのもそんなことがあるようにも思われます。
 この渡りの目的地であろう最上川上空にに飛来すると白鳥は上空で円を描きながら高度を下げて来ます。そして地上近くになると同じ群れでも個体1羽1羽が自分の気に入った着水場所を選んで右方向や左方向に旋回して着水場所へと舞い降ります(写真 4)。
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 写真 4 右左に旋回降下する白鳥

 今日は、午前8時を過ぎても次々と群れが南下渡来してきます。どの位渡ってくるのかと9時頃まで観察してみようと思って観察を継続しました。8時02分に34羽の群れが飛来して観察を終了した9時14分までの間に、269羽15群の白鳥が渡来してきました。もちろんその中には最上川に降下しないでそのまま南下した群れも数群ありました。また同じ群れで渡来してもづけてそのまま飛び続けていく個体とこの場所で降下体勢に入るものと別れることも見られます。もちろん同じ群れでも基本的には家族単位での行動なのでこのようなことは当然有り得ることなのです(写真 5)。
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 写真 5 降下する個体と南下を続ける群れ

 今日の観察の結果トータルすると32群660羽の南下渡来の白鳥をカウントできました。観察時間がほぼ3時間の間のこのくらいの白鳥の南下渡来があったと云うことは、やはり渡来のピークが近づきつつあるということではないでしょうか。
 ところで今朝の観察で気がついたのは、8時頃まではそれ程高い高度で渡来する白鳥が多かったのに、8時を過ぎる頃から高空での渡来が多くなったように感じました。高空で渡来する個体は、目視ではほぼごま粒と同じ位の大きさに見えます。ですから1羽で渡来した場合はほぼ見落としているのではないかなと思いました。ちなみに50mmのレンズで撮影した場合この程度の大きさにしか見えません(写真 6)。
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 写真 6 高空を飛翔する白鳥の群

 この写真でも大きい程かかな?4~5羽以上でないと見落としてしまうことも多いのかとも思います。高空での渡来は遠く離れた場所からのものかとも考えています。高い空というのも500m以上かとも思われますが、目視は無理でしょうか?
 今日の観察で言い忘れましたが、幼鳥を確認しました。幼鳥が渡来していると言うことは家族群ももう既に来ていると言うことです。やはり羽達のピークが近づきつつあると云うことですね。



 白鳥もカモもカワウもが全くいない!?10月14日

 昨日10月13日は約600羽もの白鳥の渡来を確認したわけですが、今朝午前2時37分にも白鳥が我が家の上を鳴きながら飛んで行くのを耳にしました。その30分ぐらい萌後にもまた白鳥の声がしました。昨日はあのような渡来状況だったので続けて観察すると道だろうかと言うことで10月14日も同じように観察に出掛けました。
 今日も最上川スワンパークには白鳥が1羽も降りていません。今日は川に突き出た堰堤に釣り人がいました。その性かも分かりません。
 昨日と同じ場所に車を進めましたが、中州には白鳥が1羽も降りません。白鳥どころかカモも最近増えつつあるカワウも全くいません。何があったのだろうかと思いながら観察場所に到着。あれこれ考えましたが、考えられるのは中州に人が近づいたことしか考えられません(写真1)。
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 写真 1 生き物の姿が全くいない

 今日も渡来する白鳥をカウントするのだから・・・・。と思いながら午前6時30分観察開始です。上空を鳴きながら1羽の白鳥が右往左往している感じです。何かがあったのだろう・・・・。
 6時34分 11羽の白鳥が来たの方角から渡来しました。しかしながら水面にはハクチョウの姿もないし、声も聞こえないためか降下しようとする感じが全くなく南に飛び去りました。
 午前7時14分 観察場所の北側の鳥海山の方から白鳥の声が聞こえてきます。昨日も土手の上で観察していたのですが、昨日は飛び立ちと渡来の両方を観察しなければならなかったの観察場所の上空に来て始めで白鳥の渡来に気がついていたのです。今日は水面に全く白鳥がいないので渡来する方向だけを注意して観察すれば良いのです。この場所での観察は昨年もしていましたが、両方を観察していたので鳥海山方向からの渡来の観察は出来ていませんでした。間違いなくそっちの方角から飛んできているのだとは思っていましたが、鳥海山を完全にバックにしての渡来の確認は初めてです(写真2)。
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 写真 2 鳥海山をバックに渡来する群れ

 今日は9時30分までの観察でしたが、今日最大のハクチョウの群れは8時11分の72羽でした。渡来する白鳥だけの観察でしたから写真2とほとんど同じ構図ですが、今日最大の群れはこんな状況でした(写真3)。
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 写真3 今日最大の72羽の渡来群

 白鳥や水鳥が全くいなくなった原因が分かりました。7時29分になって水面に何かが動いているのが見えました。よくよく観察すると2人乗りの船外機付きの釣り船です。本当に中州のすぐ上流に見えました(写真4)。
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 写真 4 釣り船(写真左)

 これでは白鳥や水鳥達が水面にいる訳がありません。そうだここは国民なら誰でも自由に使用できる河川なのだ。それで納得しました。白鳥を観察する人間としては、白鳥が渡来したらもう少しその場所を自由に安心して使わせてやっても良いのでは?と思うのは白鳥好きの言うことで釣り人には釣り人の思いがあるのですよね。
 全く白鳥のいない中州に8時10分に幼少を1羽連れた3羽の白鳥が舞い降りました(写真5)。
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 写真 5 やっと舞い降りた3羽

舞い降りては見たものの全く水鳥がいないので周囲を警戒している様子がありありです。
 8時19分になってこの3羽が飛び立ちました。何があったのだろうかとみていたらやはり釣りふねです。中州の下流の方に言っていたのですが、今度は中州のこちら側にエンジンを使って上ってきていたのです。これでは白鳥も休めるわけがないですね。
 8時45分 着ての方角の釣果以前の方からの渡来を双眼鏡で見ていると白鳥の群が見えました。紅葉真っ盛りの鳥海山をバックに真っ白い白鳥が飛翔してくるのです(写真6)。
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 写真 6 写真6 紅葉をバックに渡来

 釣り船の性でしょうか、9時00分になっても水鳥発ちの姿が見えません。釣り船が水面にいる間は無理ですね。
9時28分になってようやく4羽の亜成鳥と思われる白鳥が中州付近に着水しました。
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 写真 7 舞い降りた4羽の白鳥

釣り船はもう上がってしまったのかな?
 そんなことを思いながら今日の観察を9:30で終えました。今日の観察では、26群497羽の渡来を観察しました。

 昨日と今日の2日間白鳥の渡来を中心に観察しましたが、2日間で観察した渡来白鳥は、58の群れで1,157羽でした。昨日今日でここ最上川で1,000以上の渡来を確認できたのですね。今日最上川には1羽もいませんでしたのでもう最上川以南には2日間で1,157羽の白鳥が渡って来ていいるのですね。
 渡って来た白鳥達がくれぐれも怪我をしないことを祈っています。
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初渡来から5日目の今朝の様子(2018年10月9日)

 2018年の最上川への初渡来から5日目の今朝、白鳥達の様子がどのようなものか観察に出掛けてみました。今朝は釣り人がいないのにもかかわらずやはりスワンパークへの渡来はないようです。
 初飛来場所の中州(河口から5.8Km付近)には沢山の白鳥達がいました。
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写真 1  午前6時24分 撮影

 観察開始は午前6時16分です。
 恐らく昨日か昨夜渡来の白鳥らしい群れが鳴き声を交わしながらどうやら飛び立ちそうです。 午前6時18分、やはり白鳥達の飛び出しです。30羽ほどの白鳥達が飛び立っていきました。(自宅に帰って飛び立ったハクチョウの数を写真でカウントすると36羽でした)
その後は鳴き声もあまり聞こえなくなり少し静かになりました。
 水面を動き回る白鳥達もあまりいないので水面に残っている白鳥の数をカウントしたら124羽でした(写真1)。と言うことは飛び立った白鳥と合計すると今朝はこの場所に160羽ほどの白鳥がいたことになるようです。初渡来から5日目でもう160羽もの白鳥が渡って来ています。
 しばらく観察していると上空から6羽の白鳥が降りてきました(写真 2)。
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 写真 2 渡来着水する6羽の白鳥

 飛翔してきた方向から見ると南下してきた白鳥の群れのようです。午前6時31分着水です。6時34分にも3羽の白鳥がまた降りて来ました。やはり渡来は次々と行われているようです。
 午前6時43分、今度はまた水面で飛び立とうというような上流部に向かって列を作り始めて鳴き交わす声も聞こえ始めまてきました(写真3)。
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 写真 3 飛び立ちに動き始めた群れ

 水面に残っていた白鳥もまた飛び立ちそうです。
6時47分、やはり白鳥達が飛び立っていきます。(この群も写真でカウントすると34羽でした(写真 4)
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 写真 4  南下飛去する群れ

 6時55分また一群が飛び立っていきます。(この群は写真でカウントすると26羽でした)
 北から南下渡来する群れがあり、ここから南下飛去する群れがありと、白鳥の群れが入れ代わり動いています。最上川ではもう白鳥渡りの季節の序盤を迎えているようです。
 
 観察中には気がつかなかったのですが、ネガチェック中にどうやら標識鳥がいたようです。飛び発って行くハクチョウの首が赤茶色に見えたので??と思ってみると脚環も着いているようです。でも電波発信機はないのかな?残念ながら遠くて詳しくは分かりませんが、どうやら幼鳥ではないようです。色彩からしてロシアのものでしょうか?でも最近は標識もいろいろあるので注意しないとと思っています。
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 写真 5 標識鳥 赤?

  南下飛去ですから山形県より南の白鳥渡来地の皆さん気をつけて見て下さい。 

最上川に白鳥が2018年シーズン初渡来

 2018年の白鳥シーズンの幕開けです。
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今日2018年10月4日午前6時33分 最上川の両羽橋上流の中州で白鳥6羽を初確認しました。
 日本白鳥の会のメーリングで、9月29日午後1時頃に稚内大沼でコハク7羽の初渡来の確認と10月2日午後五時にクッチャロ湖で2羽のコハクを確認したとの知らせが入っていましたので、酒田にもそろそろやってくるかなとは思っていました。そのため昨10月3日も最上川のパトロールに出かけたのですが、昨日は傷病鳥2羽だけの確認で初渡来は確認できませんでした。ここ2~3年は稚内大沼やクッチャロ湖で初渡来の知らせが入るとそれからほぼ3日後には酒田でも白鳥の渡来を確認できていたのです。
 今朝も出かけたらハクチョウの姿がありました(写真2)。遠いので白鳥種の確認は出来ませんでしたが、恐らくコハクチョウだと思われます。
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写真 2

 白鳥を観察していましたが、水浴び(写真3)をしたり羽ばたき(写真4)をしたり少し動き回っている所を見るとこの白鳥達は昨夜のうちの渡来かなと推測しました。
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写真 3 水浴びをする白鳥(写真中央)

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写真 4 水浴び後に羽ばたきをする白鳥

 最上川にこの時期に渡来する白鳥のほとんどは、水面に降りて疲れを取るように休息するのがほとんどです。そして、この時期には長くても1日で、ほとんどは半日程度の滞在で採食や南下飛去をするのです。
 今朝の白鳥達の動き回る様子を見ていると今朝早くの到着ではなく、昨夜のうちの到着で、休息を十分取っている白鳥達に見えました。
 水面での行動を見ているとどうも間もなく飛び立ちそうだと直感しました。案の定6時44分には水面を飛び立って南下飛去しました(写真5)。
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写真 5 6:44 飛び上がり 南下飛去する群れ

 最上川スワンパークは今年8月の2回の大水の後、僕が通称ジャングルパークと呼ぶ中州の森のすぐ東側に砂州の浅瀬が出来ていたのでひょっとすると今年はこちらに初渡来が・・・・とも思っていたのですが、やっぱり安全な上流の中州の方に渡来したようです。
 あのジャングルパークの森林となっている木は早く撤去すべきだとは思うのですが・・・。国土交通省のお役人は何を考えているのでしょうかね。

 2018年白鳥シーズンが始まりましたよ。

 追伸 北海道の新ひだか町に在住の友人からのメールでは、むかわ町にオオハクチョウの家族が飛来していると言うことでした。
 追伸 2 別の情報ですが、同じ場所で今日午後8羽の別の群れも観察されたのとことです。
       これから続々と白鳥達がやって来ますね。

白鳥額面の羽毛形状の経年変化

白鳥の こ・そ・あ・ど ごと  ⑬
  白鳥額面の羽毛形状の経年変化
     ~主として額羽毛生え際形状による白鳥成鳥期の年齢推測の試み~
 
  このシリーズの『白鳥のこそあどごと⑩』で、白鳥顔面の額羽毛形状で白鳥の年齢が分かるのではないか?と取り上げました。そのことを継続して観察たら、やはり額羽毛形状で成鳥の年齢の推測がある程度可能であることが分かりました。そのことについて今回は主として取り上げてみたいと思います。前回の内容を思い出す意味で『白鳥のこそあどごと⑩ 白鳥顔面のあれこれ』の中で取り上げた額面の羽毛形状についてかいつまんで述べてみたいと思います。

 白鳥の顔面の羽毛は成長段階によって変化している
 まず「あなたは白鳥の成鳥の顔面の羽毛がどのような範囲にどのように生えているか思い浮かべることができますか?」。共通認識を持っていただくためにオオハクとコハクの成鳥を写真①として提示しました。
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写真 ① オオハク(左)  コハク(右)

 白鳥の成鳥の顔面にどのように羽毛が生えているか思い出しましたか?
 ではコハクのヒナが孵化した時の顔面羽毛の様子を見て下さい。それが②の写真です。このヒナの写真は、傷病鳥のつがいから孵化したヒナの写真(2006年5月26日撮影)です。
② 000日(孵化当日)0526
 写真 ② 孵化当日のコハクのヒナ

 ①の写真と比較してみるとその違いがよく分かると思います。孵化直後のヒナの羽毛の生え方の大きな特徴として成鳥時と違って目先の部分は皮膚ではなく羽毛がびっしり生えています。勿論嘴峰上にも羽毛が生えています。
 その羽毛が生後50日過ぎになると写真③のようにくちばしの形が白鳥本来のがっしりとした形状になると共に顔面の羽毛がくちばし基部の部分から 少しずつ後退するように少なくなっていることも分かると思います。
③ 058日(0723)
 写真 ③ 58日目

  くちばし基部の部分は羽毛がほとんど見られなくなり、くちばしを覆う皮膚が形成されてきているのが分かると思います。

④ 117日(0920)
 写真 ④ 117日目

 そして100日目を超えると写真④のように嘴峰上部の左右の目先部分の羽毛が無くなり、皮膚が左右の目先の部分に細く深く入り込むようになってきています。しかしながらそれでもまだくちばしの皮膚部分は目先にまでは達していません。それだけで無くくちばし基部左右の頬の部分にもまだごく短い羽毛が密生していることも分かります。
⑤ 149日(1022)
 写真 ⑤ 149日目

生後150日頃になって嘴峰基部上部の側面部分の羽毛がようやく目先の方に後退するように無くなり、皮膚が目先の部分まで形成されてきたように思われます(写真⑤)。それと共に嘴峰に少しずつ黄色味が見られるようになりやがて成鳥になった時にビルパターンの黒色部分となる部分に赤い色彩も見られるようになります。それでもくちばし基部側面にはまだ羽毛痕らしきものが残っているようです。
⑥ 239日2(0120)
 写真 ⑥ 239日目 

 生後240日(8ヶ月)頃になると幼鳥羽毛も少なくなり亜成鳥独特の白色に幼鳥羽の黒色が入り交じったごま塩的な色彩になります(写真⑥)。この頃になると嘴峰側面基部の形状もほぼ成鳥と同じ形状と色彩になってきています。それと同時に額羽毛も多くなり、その形状が嘴峰上部に垂れ下がるように入り込む亜成鳥期の特徴がしっかりと読み取れます。
 写真②から⑥までは、傷病鳥のつがいから生まれた個体の物です。ですから孵化からの経過日数も自然界の白夜で育った個体とは大きく違うと思われます。本当の意味で自然界で生まれ育った物ではありませんが、額羽毛の生え際の経過変化については自然界でもほぼ同じような経過を経ているものと考えても良いのではないかと思います。
 生後300日ほどになると嘴峰部分の赤味もほとんど見られなくなり、くちばし黄色部分の色彩もほぼ成鳥と同じほど濃くなり黒色パターンも明確になってきます(写真⑦)。
⑦ 295日1(0317)
 写真 ⑦ 295日目 

 このように孵化から亜成鳥期にかけて額羽毛形状や嘴峰周辺部の羽毛形状は経年変化してきているのがおわかりいただけたと思います。。

  幼鳥期の額羽毛の生え際形状(自然界育ちの個体)
 傷病鳥のつがいから生まれた白鳥ではなく、白鳥本来の繁殖地で生まれた白鳥の額部分の羽毛生え際形状を日本で最初に確認できるのはその年の秋に、白鳥が日本に初渡来した時だと思います。初秋、本州に初飛来した時のコハク幼鳥の額羽毛部分の生え際形状を撮影したものが写真⑧で、以前のブログにも掲載しています。
⑧ DSC_4385 20101006 c480
 写真 ⑧ 2010年 初飛来時

 この写真は2010年10月6日最上川河口(酒田市)近郊の水田で撮影したものです。また2015年10月10日に御幕場大池(村上市)で撮影した飛来当初と思われるコハク幼鳥は写真⑨です。
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 写真 ⑨ 2015年 初飛来時

 写真⑧も⑨も額羽毛の形状等から判断すると傷病鳥の幼鳥の写真④か⑤に近い状況だと判断出来そうです。いずれにしてもコハク幼鳥期の個体は、傷病鳥から産まれたヒナも自然界で産まれたヒナも額羽毛の生え際形状は、ほぼ同じだと言って良いと考えられます。
 このようにコハク幼鳥期の額羽毛の生え際形状はほぼ同じであるが、ではオオハクの幼鳥はどうだろうかということになる。オオハクは通常コハクよりも日本への渡来が遅い傾向があるが調べてみた。写真⑩は2010年10月20日、日本海上を飛来して大潟村の水田に降下休息した直後の群れのオオハク幼鳥です。
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 写真 ⑩ オオハク 初飛来時

 この写真を見る限りにおいて、この時期のオオハク幼鳥の額羽毛生え際形状にコハクとの大きな差異は読み取ることが出来ません。ということはコハク・オオハク共に同じ成長経過を辿って額羽毛の生え際形状が形成されていると考えても良いのではないだろうか。 ここまでは傷病鳥のヒナの孵化直後からの経過観察と飛来直後の幼鳥を中心に考察してきたので案外簡単に行うことが出来た。しかしながら成鳥になった段階、すなわち体色が完全に白一色になった個体で、しかも個体識別が出来ていない個体において成長段階すなわち老若の判断をどのような基準で行い得るのかということになる。要するに成鳥になった白鳥のどの個体が成鳥になったばかりの個体で、どの個体が成鳥になってある程度年月を経た個体なのか、あるいは老鳥なのかを知る術が今のところないということなのです。その知る術が、実は今まで述べてきた額羽毛生え際形状で知り得るのではないかと考えました。と考えるのは、成長するに伴って白鳥の額羽毛生え際形状が僅かずつではあるが変化してきていました。難しい言葉で言えば経年変化とでも言うのでしょうか。額羽毛の生え際形状は経年変化で少しずつ変化してきていました。その傾向が成鳥になった段階でも見られると成鳥期の年齢推測も可能だということになるのではないだろうか。
 この成鳥時の老若は、額羽毛の生え際形状で知り得るのではないかという点が、今回に一番述べたいことなのです

  幼鳥期初期~亜成鳥初期段階までの額羽毛形状
 幼鳥初期段階の額羽毛形状は、写真⑧~⑩で額中央部の羽毛が嘴峰上に水滴が垂れ下がるような形や少し鋭角に入り込む形だということ。そして羽毛はそれ程まだ生えていないということは分かった。幼鳥後期段階から亜成鳥の初期段階でもこの傾向がある。そしてこの部分の羽毛がはっきりと生え揃うことも分かりました(写真⑪・⑫)。

⑪ オオハク 幼鳥・亜成鳥期 額羽毛の生え際形状
 写真 ⑪ オオハク  幼鳥期(上) 亜成鳥期(下)

⑫コハク幼鳥期・亜成鳥期 額生え際形状
 写真 ⑫ コハク  幼鳥期(上)  亜成鳥期(下)

 幼鳥期後期から亜成鳥期になる時期が本格的な寒さになる頃とほぼ一致していることから寒さ対策としてしっかりと羽毛に覆われてくるのではないかと推測することも出来る。特に大きな問題ではないが、幼鳥後期から亜成鳥期にかけての額羽毛生え際形状にオオハクとコハクでは若干違いが見られるようだ。その違いは、幼鳥期後期において顕著なような気がする。写真⑪上はオオハク幼鳥で写真⑫上はコハク幼鳥ですが、嘴峰上部に垂れ下がるように入り込む形状がオオハクはどちらかというと雫形で少し丸味を帯びているが、コハクはその嘴峰上部に入り込んでいる先端部が少し鋭角になっているように思われる。
 ここに提示した写真だけではなく、筆者がストックしてある別の写真でもどちらかというと同じような傾向があるようです。

 額羽毛の生え際形状について述べてきたが、この亜成鳥期まではほとんど問題なく述べることが出来たと考えている。というのは幼鳥期と亜成鳥期は、白鳥が今どんな時期にあるのか?ということが体の色彩で明確に分かります。ところが成鳥期に入ると白鳥の体色が全て白色になってしまいます。そして成鳥期の額羽毛の生え際形状は、観察している範囲内ですが、1パターンではないのです。詳しく述べると成鳥段階の額羽毛生え際形状には2パターン見られるのです。1つは、亜成鳥期と同様に羽毛が嘴峰上に三角形をして入り込んでいる個体。もう1つは、額羽毛生え際形状が緩い曲線を描いているだけで、嘴峰上に入り込んでいない個体の2パターン見られるのです。 
 これまでの観察経過から考察すると額羽毛生え際が嘴峰上に三角形に入り込んでいる成鳥は、亜成鳥期の延長線上で成鳥の初期段階であるとするのがごく普通のようにも考えられます。でも筆者の観察範囲外で亜成鳥期から既に緩い曲線状の形状を示していた個体も存在するということも考えられるのです。
 要するに個体識別をして継続的にその形状の変化を観察していないと額羽毛が緩い曲線形状を示す成鳥個体が、三角形を示していた個体のその後の状態だということを断定できないのです。こうなるとどうしても個体識別をした白鳥を継続的に観察しないとこの問題はそれなりの結論を出せないということになります。
 継続的に観察できるというのは、個体識別が出来て数年間に亘って追跡調査が出来る個体、あるいは標識を着けた個体、それに傷病個体で数年間に亘って生存確認できている個体、もしくは動物園等で飼育されている個体に限られると考えられます。でも着標個体や個体識別が出来る個体が毎年同じ湖沼に必ず渡来するという保証はありません。動物園などでもこの額羽毛形状の経年変化を調べているとは思われません。ここは、数年間に渡って生存している傷病個体の継続観察に頼ることしかないようです。幸いにして筆者が5~6シーズンに渡って継続観察している傷病個体が数羽いました。
 
傷病個体で経年変化の確認を・・・                
 これまでも傷病鳥の世界についてブログ等で数回に渡って取り上げてきました。御幕場大池の傷病個体について再度詳細に調べてみました。オオハクは幼鳥時から、コハクについては亜成鳥の時から継続観察していた個体がそれぞれ1羽いて額羽毛生え際形状の経年変化を確認できることが判明しました。

 ①オオハク個体の額羽毛形状の経年変化
 左翼の初列と次列風切の切断個体として2013年1月31日に初確認しました(写真⑬)。
⑬ DSC_6777 cc  2013年1月31日
 写真 ⑬ オオハク幼鳥

 写真⑬で分かるようにオオハク幼鳥時の写真⑪とほぼ同じ形状であることが分かります。このオオハク個体は2014年シーズンには亜成鳥期だということになると思います。そして2015年シーズンには成鳥期の1年目の段階にあると考えられます。その成鳥期1年目の2016年1月7日に撮影したのが写真⑭です。
⑭ DSC3431 c  2016年1月7日
 写真 ⑭ 成鳥1年目

 額羽毛の形状が良くわかるように顔の部分を拡大していますが、その形状はおわかり頂けると思います。嘴峰上部のビルパターンの黒色形状も写真⑬の個体と同一個体だとほぼ識別出来ると思います。この額羽毛の嘴峰上部に入り込んだ形状は先端部が少し細くなっていることも分かると思います。そして成鳥3年目の今年2018年4月12日の額羽毛形状は写真⑮です。
⑮ DSC_3863 2018・04・12 オAの個体 2
 写真 ⑮ 成鳥3年目

 成鳥3年目になると嘴峰部分に入り込んできている羽毛先端部が少なく薄くなってきていることが分かると思います。

 この1個体の経年変化だけでは明らかなことは言えませんが、これまでのその他の観察個体の結果と照らし合わせてみると嘴峰部分に入り込んできている羽毛が成長にともなって薄く少なくなるという経過からやがて直線あるいは緩い曲線状になっていく経過を辿るのではないかと思われます。
 額羽毛で嘴峰上部に入り込んだ形状が成鳥期初期段階に先端部が少し細くなってそして経年変化で(この個体の場合は3年目に)薄くなっていることまでは継続観察できました。幼鳥期からの6シーズンの継続観察記録からこのようなことまで判明しました。

②コハク個体の額羽毛形状の経年変化         
 オオハクと同様に継続観察できたコハク傷病鳥は2015年1月5日に右翼欠損の亜成鳥として初認しました(写真⑯)。
⑯ DSC_2507 c600 2015年3月15日 亜成鳥
 写真 ⑯ コハク亜成鳥

 この段階でこのコハクの額羽毛生え際形状は嘴峰上部にその先端部が少し三角形状に入り込む亜成鳥期の特徴を示しています。もちろん頭部には亜成鳥期の特徴でもある黒色羽毛が所々に確認できます。
 
 2年後の成鳥期の2年目、2017年4月14日に撮影したものが写真⑰です。
⑰ DSC_5348 c  2017年4月14日
 写真 ⑰ コハク成鳥2年目

 額部分の黒色部が少し小さくなると共に額に入り込んでいる白色羽毛も亜成鳥期の写真⑯と比較して少し細くなっているようにも思えます。さらに1年後で成鳥3年目の2018年4月12日に撮影したものが写真⑱です。
⑱ DSC_5246 c600
 写真 ⑱ コハク成鳥3年目

 この時期になると嘴峰上部の額羽毛形状で三角形になっていた先端部分の羽毛が数本の白色羽毛だけを確認できる程度になっていることが分かります。ビルパターンは額の黒色部の変化は認められるが亜成鳥期のものと基本的には大きな変化がなく同一個体だということは確認できます。
 こうやって個体識別したコハク個体の額羽毛生え際形状の経年変化を見てもオオハクの時と同様に成鳥期に入って数年後には三角形先端部の羽毛が消滅していく傾向が見られるようです。もちろん今後この額羽毛生え際形状が直線的になるのか、少しカーブを描いた曲線状になるのかは個体差があると思われますが、成鳥期の白鳥でも額に尖った白色羽毛形状が認められる白鳥はまだ若い段階の成鳥だということがこれまでの継続観察で言えるようです。ただし、このことが成鳥期における全ての個体に当てはまるのかというとそれは言えないと思います。個体差ということもありもう少し慎重さが求められるような気もします。

まとめ         
 白鳥の顔面部分の羽毛の生え方が成鳥とは違うというところからこの追跡研究を始めました。こうやって見ると白鳥も人間と同じように成長と共に幼い顔に羽毛が生え、やがて大人の顔になる経年変化がありました。そして傷病個体を通してですが、成鳥期でもさらに変化があることも分かりました。もちろん人間も動物ですが、白鳥も人間と同じように成長と共に顔面、特に額羽毛の生え際形状にその時期特有の特徴を表していることが、傷病鳥という個体を通して成鳥期のある限られた一部分ではありますが経年変化の様子を知ることが出来たように思います。
 この2羽の傷病個体を更に追跡観察が出来れば更に詳しくその後の成鳥期の経年変化の様子が分かるものと考えています。

傷病越夏個体のラブリング行動の意味合いは?

 怪我や病気で故郷のロシア極東に帰ることの出来ない所謂傷病越夏個体の白鳥達のことは何度かこのブログでも取り上げてきました。でも、いろいろな状況でのラブリング行動を観察するにつれてどう解釈したら良いのか、どう考えるべきだろうかとどんどん不可解な世界に吸い込まれていくような感じがしてならないのです。
 特に現在主として観察している御幕場大池(村上市)の傷病鳥のことをこれから述べるが、これが本当の姿なのだろうかと考え込んでしまう。
 御幕場大池は、池の南側に家庭用配電の電線が張られていて、ねぐらに帰着しようとして電線に接触し救護所に収容されていった白鳥も目撃している。この池でつい最近(2018年3月23日)確認した傷病白鳥は、オオハク6羽、コハク3羽の計9羽です。そのほとんどが翼を損傷して飛翔できないものでした。

 観察事例1 傷病(右翼欠損)越夏個体への戻りラブリング 

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写真1 戻りラブリング(右 右翼欠損コハク)

 この事例については、私の一連のブログのNO.105とNO.115にも取り上げましたので、その詳細についてはそちらをお読み下さい。要するに、この池に傷病鳥として越夏していたコハクの所に一度ロシア極東の繁殖地周辺まで戻ったと思われる連れ合いと思われるコハクがその年の秋に日本に渡って来ました。そして一緒に飛び立てなかったつがいの相手と思われる傷病コハクの所に戻って来て2016年2月17日に、ラブリング行動をしたということです。
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写真2 右翼欠損コハク(右)のビルパターン確認用

 これを観察した時には、白鳥はつがいの一方が亡くなるまでつがい関係を維持継続すると言われてきたことが本当だと実感しました。その一端を実際に観察した者として、一つの感慨の年念を持ちながらブログを書いたものでした。しかしその後は、自由に飛び回れるつがいの一方を観察したり、この傷病コハクとのラブリングをも見ることは一度もありませんでした。渡りの途中で不慮の事故で命を落としたのか自由に飛び回れる別のコハクとつがいを組んで生きているのかも分かりません。恐らく別の個体とつがいを組んで子育てをしているのではないかと思っています。
 ただ、この池で通年を過ごさざるを得ない傷病コハクは、飛び出すことも出来ない一種の閉鎖空間的生活ではないかと思っています。この傷病越夏コハクが置かれた状況は、また空へは絶対的に飛び出せないという絶望的な状況と全く同じではないかと考えられないでしょうか。このような状況に置かれた白鳥が9羽居るのです。小さな空間ですから周囲のネコを始めとしたタヌキやキツネの獣類からも自分の身を守らなくてはならないのです。オオハクやコハク等と言っていられないのかも知れません。ただ1つだけはっきりしているのは、あの戻りラブリングをしたコハクはもう戻っては来ないだろうと言うことです。別な見方をすれば、本当は戻りラブリングがなかった方が、この傷病コハクにとって、ある意味あきらめもついたのではないだろうかと思ったりもしています。

 観察事例2
オオハク標識鳥00655と右翼欠損コハクとのラブリング行動

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写真3 右翼欠損コハク(左)と標識鳥00655オオハク(右)のラブリング

 2017年10月18日この2017シーズン最初の御幕場大池の白鳥観察に出かけました。2017年の春以来の観察なので、傷病鳥達の状況も確認しました。ほぼ春の状況と変わらない状況だったのですが、一つだけ気がついたのは、ショルダータイプの発信機を付けたオオハクチョウがいるということでした。村上市在住の知人にそのオオハクのことを尋ねたら、春の頃からここにやって来て、越夏もしたということで脚環もついていると言うことでした。このタイプの発信機の白鳥は初めてで、脚環はついているようですが、首輪は落下したのかも分かりませんが、ついていませんでした。
 2017シーズン初の観察なので、この池で越夏している傷病鳥の羽数や状況を確認している途中で、エッ!と思われる行動を確認しました。それは2016年2月17日に戻りラブリングを受けていた傷病コハクとショルダータイプの発信機を付けたオオハクとのラブリング行動でした。写真3を見ると分かるように左の右翼欠損コハク個体のビルパターンを確認すると写真2の右個体と同じことから同一個体だと識別が出来ました。また右側のオオハクは、体の大きさとUBPの形状でオオハクと識別でき、首のつけ根と翼の間に筒型のショルダー型の発信機を装着していることも分かりました。
 ラブリング行動という行動は、一方の白鳥だけが行おうとして行動してもそれを受ける白鳥がそのラブリング行動を受ける行動を起こさなければ成立しない行動だと考えています。とすればこの傷病コハクと発信機付きオオハクの双方がラブリングという行動を起こそうとその意思が一致したことになると思います。
 異種であるオオハクとコハクがラブリング行動をし合うということはこれまでも何度も報告があります。またこの池の他の傷病コハクと傷病オオハクがラブリング行動をしていることも観察しています。ですからコハクとオオハクがラブリング行動をすることは勿論あり得ることです。したがって一般論として、この傷病コハクとオオハクがラブリング行動をすることは何ら問題になることではないのです。何故ここで驚きの思いでこのラブリング行動を取り上げたのかというとこの傷病コハクは、一年前の2015シーズンの後半の2月に以前のつがい相手だろうと思われるコハクとラブリング行動をしていたのです。付け加えていえば2016シーズンの10月~3月の観察においてこの傷病コハクのラブリング行動は観察していません。 この傷病コハクは、2015年3月からのこの池での越夏個体でもあります。また脚環番号00655の標識オオハク個体も2016シーズン末からこの池での越夏個体です。夏の期間にどのような経緯があったかも分かりませんが、2017年10月18日には異種白鳥のラブリング行動を観察したのです。傷病コハクのつがい相手と思われるコハクのその後の飛来は恐らくなかったものと思われます。そのためにこの右翼欠損のコハクが、異種間でのラブリング行動をするようになったのでしょうか。
 白鳥の生態では、白鳥は一度結んだつがい関係を相手が亡くならない限り解消しないとも言われています。このことの見直しが必要なのでしょうか。あるいは、ラブリング行動の意味合いをどう捉えるかの再考慮の必要性があるのでしょうか。
 
 この00655のオオハクとこの傷病コハクについてはもう少し気になることもあるのです。
 2017年10月18日にこの傷病コハクとのラブリング行動を観察後に、この池で観察を続けていると00655のオオハクについて2つの重要なことが分かりました。1つは、この標識オオハクは飛翔ができるということです(写真4)。
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写真4 飛翔する00655のオオハク

2つ目は、標識オオハクの連れと思われるオオハクがいて、その個体は若干飛翔は出来るが、池の外に飛び出せるほどの飛翔力はないようだということです。この標識オオハクには、連れ合いと思われる同種の個体がいて、その個体が飛翔できないためにこの池で越夏していたらしいのです(写真5)。
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写真5 標識鳥の連れ合いと思われるオオハク(後方)

 連れ合いらしい相手がいても異種である傷病コハクとラブリング行動をするということは、どういうことなのだろうか?ということにもなるのです。
 本当にラブリング行動の持つ意味合いをもう一度考えてみる必要があるのでしょうか。
 この池にはオオハクコハク合わせて10羽近くの白鳥が1年中生活しています。それでもラブリング行動をするのは、前述した傷病コハクと傷病オオハクの一緒に行動している2羽だけでした。それに加えて今回の標識オオハクと傷病コハクの2羽がラブリング行動をするということになります。年間を通してこの池で生活している白鳥達でもラブリング行動の交わし合いを観察できるのはこの4羽だけです。特別な意識が働いている関係なのでしょうか。

観察事例3
 オオハク標識鳥00655と右翼欠損コハクとのラブリング行動と
 その直後の標識オオハクとその連れ合いのオオハクとのラブリング行動


 2018年3月23日 終の写真展も終わって久しぶりにゆっくりした気分で御幕場大池での白鳥観察に出かけた。前回ここで観察したのは3月11日だったので、相当数の白鳥の北上飛去がもう行われたのではないだろうかと思いながら訪ねた。池に到着したのは12時30分近くだったので、池にはいつもの傷病白鳥を中心に12羽の白鳥がいるだけだった。例の通りに傷病白鳥を1羽ずつ確認したが、傷病鳥ではないが、標識鳥0065のオオハクの姿が見えない。3月11日には確認できたのに、北上飛去したのだろうか?それとも落鳥?水田採食に出かけた?いろいろ考えたが、確認できないのだからどうにもならない。
 夕方17時42分になりようやく採食から戻って来る白鳥の姿が見え始めた。17時52分少し低い高度で鳴きながら池に戻って来る白鳥を観察した。よく見るとショルダータイプの発信機を背負っている。あの00655の標識オオハクだ(写真6)。
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 写真6 採食から戻って来た00655の標識オオハク

 まだこの池にいたのだ。着水と同時に白鳥が鳴き交わす声が聞こえてきた。ラブリングが行われる時の鳴き交わしのようだ。その様子をカメラで追跡観察していると池の南側で給餌されている餌を食べている集団の中から着水した白鳥へと一直線に水面を進んでいる個体を発見した。勿論00655のオオハクも鳴きながらその白鳥へと近づいていく(写真7)。
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 写真7 ラブリングへの姿勢で移動するオオハク

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 写真8 近寄る右翼欠損コハクと標識オオハク

 やはりラブリング行動だ。標識白鳥は、頭部を曲げてハート形を、南側から近寄る個体は激しく鳴きながらビルアップ形のラブリングをして近づいた(写真9)。
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 写真9 コハク(左)とオオハク(右)のラブリング

 そのラブリングの後で南側から近づいて来た白鳥は、羽ばたき行動を始めた。その個体をよく見ると右の翼が無い(写真10)。
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 写真10 羽ばたく右翼欠損のコハク(左)

 あの右翼欠損のコハクのようだ。自宅に戻ってから右翼欠損の個体のビルパターンを確認すると前述してきた右翼欠損のコハクだと明確に同定できた(写真11)。
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 写真11 ビルパターンで同一個体と同定

 採食から戻って来た標識オオハクに対して、激しさを感じるようなラブリング行動を見せた。帰宅してその時間経過を見てみると約1分間に渡るラブリングであり、その間何度も激しく鳴き交わしている様子も写真に収められていた。右翼欠損のコハクがまるで「どこへ行っていたのよ!」とでも怒っていると感じるほどの激しいラブリングだったような気がする。他の白鳥が2羽に近づいていく様子が感じられたためか2羽は離れた。ラブリングを邪魔するような行動の白鳥とは別の1羽の白鳥が近づいていって、標識オオハクとラブリング行動をした(写真12)。
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 写真12 直後に別の個体とラブリング行動

 どうやらこの標識オオハクとつがい行動をしているオオハクらしい。オオハク同士のラブリングでも2回ほど首を曲げたハート形のラブリング行動を観察した(写真13)。まだこの池にこの標識白鳥とつがい行動をしているオオハクが残っているようだ。
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 写真13  連れ合いと思われるオオハクとラブリングする標識個体 

 でもこの00655の標識オオハクは、採食から戻って来て最初に右翼欠損のコハクと少し激しさを感じるラブリング行動をして、その直後に元からの連れ合いと思われるオオハクともラブリング行動をした。この行動をどのように解釈したら良いのだろうか。それと同時にこれまで述べてきた3つの観察事例をどのように解釈すべきだろうか。確かに越夏個体同士という特殊な環境におかれている白鳥だが、種を越えてのラブリングとほぼ同時に同種間のラブリングをも同じ個体が行うというのはどのように解釈すべきだろうか。

 飛翔できないオオハクとコハクが、同じ湖沼で越夏せざるを得ないという閉鎖空間での異種間のラブリング行動と同種間のラブリング行動が同居している。ラブリング行動って本当にどんな意味合いがあるのだろうか。つくづく考えさせられてしまいました。

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